コラム

2020.11.11

デザイン思考とコーチングの共通点

先日、ヤマハ発動機執行役員デザイン本部本部長の長屋明浩さんと、NewsPicksのイベントで対談させていただきました。
長屋さんは、本部長就任以来、自立するロボット・オートバイ「モトロイド」など、多くのプロダクトのデザイン設計を率い、結果、国内外問わずたくさんのアワードを手中に収めています。
対談のテーマは「問いから始める、組織開発 コーチング × デザイン思考」。
弊社のエグゼクティブコーチをつけたことがある長屋さんは、「デザイン思考とコーチングはとても似ている」とおっしゃいます。

「デザイン思考とコーチングが似ている」理由とは?

長屋さんによれば、デザイン思考とは、要するに、ロジカルシンキングの反対。
ロジカルシンキングが客観的なデータ、論理的なフローをベースに事態がどのように帰結していくかを予測あるいは判断するものであるのに対して、デザイン思考は「人の主観」に最大限の光を当てて、物事を進めていくものなのだそうです。
「こうだから、こうですよね」と因果関係をベースに設計や開発を進めるのではなく、「こうすると人はどう思いますかね?」「こうだとどうですかね?」と、人がどう思うか、感じるかをとても大切にする、と。
長屋さんのお話を聞いて、私たちが提供するコーチングとはそもそも何なのかについて、改めて考えてみたくなりました。

そもそも、コーチングとは何か?

コーチングも、元々、ロジカルシンキングに対するアンチテーゼとして生まれたようなところがあります。
「戦略は、これこれこうです。だから、あなたたちはこう動いてください」では、人は動かない。
なぜなら、人それぞれ、感情があるからです。主観があるからです。
「それは頭ではわかる、でも...」となってしまうのです。
そこで生まれてくる問いが、「そこで、あなたはどう思うのか?あなたはどうしたいのか?あなたは何を大事にしたいのか?」
ひとりひとりが勝手に組織の方針と違うことをやるのは良くないけれども、大きく目的はアラインした上で、個々人の主観をそこに入れると、どんなアイディアが出てくるのか、どんな可能性を見出せるか、組織のビジョンはどんな風に実現するのか?
組織と個人がどうコラボレーションし、「人間」を大切にしながらどう組織は発展できるのか?
ある意味、「個人と組織のつなぎ役」としてコーチングは登場し、今も、その使命を負っているのだと思っています。

経営者のあるべき姿とは?

経営思想家であるジョン・ショッターは、「科学者としての経営者」「現場の作者としての経営者」という表現を用い、経営者は、社員と一緒にストーリーを紡いでいく作者であるべきであり、科学者のようにオブザーバーとして振舞うべきではない、と述べています。
組織は客観的にきれいに分析され、機械のように動くものではなく、人と人の相互作用によって常に変化していて、意味を自らつくりあげながら発展していくものだ、ということです。
そして、経営者は分析し、データを集め、ある仮説に基づいた結果に向けて、間違いのない動きを起こしていく存在ではなく、社員と一緒に物語を紡ぎ、様々な人の主観を織り合わせ、全体として大きなタペストリーを創っていくリーダーなのだと。

組織を創っていくとき、コーチングは、人の主観に光を当て、「戦略との間の架け橋」となり得る重要な存在です。
ただ、ここで間違ってはならないのは、コーチングは、相手の主観を一方的に引き出すための手段ではありません。
自分は質問者となって、相手に主観を言うことを強要する。
それはコーチングのようであって、コーチングではありません。
「あなたはどう思う?さあ、言ってみなさい」
これは、学校の先生が生徒に問う形であり(一般論としては)、エンターテインメント化した討論会で司会者がパネラーに問う形です。

では、コーチングとは何か 。
問いを2人の間に置き、「これはどういうことなんだろうね?」「どうしたらいいだろうね?」「どう変えることができるだろうね?」と一緒に考える。
アウトプットを出すのは原則相手だとしても、一緒に探索する。
そうやって共鳴し合うことでそこに「場」が生まれ、2人で創造を起こしていく。
ヘリコプターに乗って空中に留まりながら、ジャングルには何があるの?と安全地帯からトランシーバーで問うわけではないのです。
2人で一緒にジャングルに分け入って行き、そこに何かを見出す。
人の主観を大事にする。
そのために問いを間に置き、一緒に探索する。
そんなコーチングが組織のあちらこちらで行われ、個人と組織の間に「新しいつながり」が生まれていく。
それが、私たちの考える組織開発なのです。

Hello, Coaching! より許可を得て転載)

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